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PPAP分析(構造主義者としての)

「あれは○○○のメタファーよ」とマツコ・デラックスがいかにも言及していそうな以前に。または、人間の行為をなんでも性的なものに結び付ける精神分析学のフロイトのことをしらなくても。果物にペンをさす、という両手の動き。しかし実際には何も持っていない両手の空白と、刺す瞬間の「Ah!」というピコ太郎の声から連想するのは、性行為である。

食事のためのフォーク。動物を、または人を刺すためのナイフ。挿入する/挿入される事の快楽。刺(挿)すという行為は人の生/性の欲望と結びついている。リンゴにペンを刺すのは一見ナンセンスだが、 そこからは刺(挿)すという行為が孕んでいる快楽を喚起して感じることができる。

もっと性的に捉えれば、複数プレイが好きな人はPPAPを4Pのことだと思うだろう。PはPlayでもあるのだ。そしてLGBTの人は、PPAPロングバージョンの「Long pen(PP)」と「Apple Pineapple(AP)」をゲイやレズビアンなどの同性同士の行為に、そして最終的にはPP-APと両者が結合することで、男女混成のバイセクシャルと結び付けているかもしれない。*1

2つの別々ものが1つになる、という事は新たなことやものを世界に産み落とすことである。同時にその一方で、そこに3つ以上の別々のものがあるとき、選ばれし2つ、または、唯一の生存者になるための争奪戦が繰り広げられる。この世界で現在進行形で発生している分断と争いの中、3つ以上の別々のものをテクノビート上で一つにしてみせたPPAPの世界的ブレイクに対して、希望を見出す平和主義者だっているかもしれない。

PPAPの世界的なブレイクの要因は様々あるといわれているが、このように、一見意味がなさそうなそのシンプルな行為の中で、下品さを全く感じさせずに、妙なポジティブさをもって生/性的な要素をほのめかしていることは大きいだろう。最近では日本エレキテル連合の「ダメよ~ダメダメ」以来じゃないだろうか。

他のブレイクの秘訣としてはよくいわれてるのは、例えば、世界の誰にでも分かるシンプルすぎる英語が用いられ、1分間の短い尺、 丁度良いBPM、といった要因。ゲイなのかヤクザなのか国籍すらもよくわからないおじさんの奇妙なダンス。しかし、それらは、見た目通り、聞いた通りとしか言いようがないし、分析しないまでも誰にでも分かることである。

ここで私は、このブログの基本方針(そんなものあるのか?)として、ここでは曲の構造を分析して捉えてみたい。

小節単位で起こせば、PPAPの構成は以下である。(|が小節の区切り)

 

ジングル
|                       |               PPAP          | ・・(Intro)

|                        |                                  |             |                         | ・・(Intro)

|   I have a pen |   I have an apple      |       Ah! | Apple pen       | ・・(A) 1段
|   I have a pen |   I have a pineapple |       Ah! | Pineapple pen| ・・(A) 2段
|Appele pen     | Pineapple pen          |       Ah! | PenPineapple apple pen | ・・(B) 3段
|               |                |                 | PenPineapple apple pen | ・・・(Outro?)

効果音~  Piko!

 

まず、このネタはお笑いの作法でいうと「3段落ち」である。振りが2回あったあとに、3回目で笑いに落とすという形式なのだ(オチとしては全く笑えないと感じている人もいるかもしれないが、少なくとも3回目は展開しているのでオチといえる)。17年2/26現在の最新の例だと以下である。

さんまのお笑い向上委員会 2017年02月25日 [Full Show HD720P] - YouTube

また、この1,2回目の反復と3回目のオチという形式は、音楽的にはブルースと同じである。ちなみにブルースとは20世紀初頭に認知され始めたアメリカの黒人による音楽である。厳密にはブルースにも様々な形式があるが、代表的なものとして、4小節x3段の計12小節を反復するAABの構成のものが多い。

https://www.youtube.com/watch?v=3MCHI23FTP8
上記した構成のようにPPAPもAAB構成でブルースと同じ形式なのだ。*2
また、その他のブルースとの関連性を挙げるとリズム面がある。ここでは詳述はしないが、例えば「 PenPineapple apple pen 」を発音すると、「P」が3回裏拍にくるなど、この曲はシンコペーション(裏拍強調)が基調になっているという点で、黒人のリズム感覚と類似している。
加えて、ブルースで語尾で韻を踏んで反復する形式と、執拗に「P」を含む単語を反復する形式も類似している。話はそれるが「P(パ行)」という破裂音を連呼するのも快楽(リビドー)を感じられる。

しかし、ここで私は、PPAPのルーツがブルースだと指摘したい訳では全くない。多くの人に受け入れられた曲やネタの構成を突き詰めると、そこには共通点があったという事である。1,2回目にフリの後、3回目にオチがあるという形式には収まりの良さがあるということ。*3
もっといえば、PP「A」P、と何故3回目だけAなのか? PPPAもPAPPもAPPPも可能ではあるが、PPAPと口ずさんだときの自然な感覚からも、これらは選択肢には入らないだろう。

また、コード進行がなく、歌のメロディーがないという点も、 PPAPが世界中へ拡散され、マネされている要因だと考えられる。音程をきにせず自由に歌えるのだ*4。様々なパロディがなされているのも、このようなシンプルさゆえにアレンジの拡張可能性が著しく高いからだといえる。

そこにはまるで、ブルースがアメリカの、そして世界中のポップスやロックへ影響を与えたのと似たような感染力がある。

○参考文献:
飯野友幸 編著「ブルースに囚われて アメリカのルーツ音楽を探る」
菊地成孔大谷能生 「東京大学アルバート・アイラー 東大ジャズ講義録・キーワード編」

*1:または道具を使うのが好きな人の中で、自慰行為について歌っていると感じている人もいるかもしれない。ピコ太郎も一人で「Ah!」とやっているのだから(ペンをどうやって使うかは、想像にお任せする)。

*2:厳密に捉えれば、最後に付け加えられた4小節をどう扱うかという問題は残っている。しかし、実質、12小節でオチているから、ベースとしてAABの構成があり、最後に4小節付け加えられ、AAB(Outro)考えればよいだろうか。

*3:とはいえ、念の為だが、自分は三回目を絶対視したい訳でも全くない。サンシャイン池崎のように1発目からインパクトを与えることもできるし、2度あることは3度あることもあるのだ。4回以上繰り返してから、ボケて笑いをとる、というパターンもいくらでもある

*4:もっといえば、この曲はDフラットがルートのベースラインでコード進行が停滞しているのに加えて、3度の音がない(オミットされている)ためメジャーやマイナーといったコード感が希薄である。更に、ベースラインはDb(1度)->Ab(5度)->B(短7度)->C(長7度)->Db(1度)と動いているが、これはブルースのベースラインである。ルートに対する短7度はブルーノートのうちの一つである。