福生の楽器屋 その2. 必要な音

何を目的に福生の楽器屋まで向かったかというと、その根本の理由は今やってるバンドに合う音のベースを追い求めて。加入以来ずっと、持っているベースのセッティングとか弦の種類とか弾き方で試行錯誤しているが、まだ改善の余地を感じている。

それに、リーダーから「ウッドベースを弾きなさい!(実際にはシャイな方なので申し訳なさそうに「よかったら弾いてくれませんか…」的な低姿勢でお願いされるのですが…)」との要望が来たりもする。しかし、予算、運搬、練習場所の確保的にも厳しく流石に無理だ。とはいえ、バンドサウンド的にも、アコースティックっぽい音が向いていそうなのはずっと自分自身も感じていた。という中で色々調べているうちに、プレシジョンベース(以下プレべ)をフレットレスにしたら良いのではないかという案が自分の中で去年の夏に出た。

フレットレスベースというと一般的にはジャコ・パストリアスウッドベースと同じようにフレットを抜いたジャズベースが有名だ。では、そのジャズベフレットレスじゃダメなのか?と問われると、今の自分にとって(そして今後もきっと)NOなのだ。その理由を説明し始めると長くなが、端的にいえば、ジャコ・パストリアスを想起させる路線とは違う方向に行きたいから。とはいえ、ジャコは自分がベースを始めたきっかけの人物だし、今でも大好きだし、ベースを弾くうえで一生付きまとってくる人物になるとも思っている。

さて、プレべのフレットレスの音を初めて聞いたのは、ユーミン(荒井由実時代)の1stと2ndでの細野晴臣のプレイ。このアルバム自体大名盤だし、2ndの「やさしさに包まれたなら」や1stの「ひこうきぐも」はジブリ映画でもお馴染み。聞いたことない人は日本人でほとんどいないはず。特に1stは個人的にも人生のマイベスト10に入る程大好きなアルバムだ。しかし、細野さんがここでフレットレスのプレべを使っているというあまりにもマニアックな情報を知ったのは、つい2年くらい前のベースマガジンだった。

プレべのフレットレスについては、使っている人を一人だけ知っていたものの、普通に売っているものとも思っていなかった。知らなかったので調べてみると、70年代にフェンダーがフレットレスのプレべを作っていたとのこと。しかし、個体は多くなく今は市場にもあまり出てこない。というわけで、去年の夏からデジマートで定期的にフェンダーの純正のプレべフレットレスを探していたわけです。で、季節に1本くらいはみかけ、ようやく試奏にこぎつけたのが今年の3月。細野さんはトーンつまみ絞り気味でこのタイプのベースを使ってたんだろうな、という事が分かり、求めている音にかなり近かった。しかし流石にヴィンテージ扱いなので30万円以上はする。

それに、この純正プレべフレットレスはウッドベースと同じようにフレットラインがない。そのため、正しい音程をとるのが一苦労だ。ならばジャコがやったみたいに、フレットのあるプレべを割安で購入しそれをライン付きでフレットレス化した方が予算的にもプレイアビリティ的にも理にかなっている。

さて、そのためにはプレべを探さないといけないし、それからどこかの楽器屋とか工房にフレットレス化をお願いしないといけない。ということで、色々調べていると、ベース界隈では有名なシンメイさんという方が、昔の日本製のジャズベースを安価に入手し、フレットレス化する試みの記事を多数書いていた。そして、その音は数10万の楽器にも引けをとらないらしい。更に、そのうちの1本があのジャコフォロワーのベーシスト、織原良次のメインベースになっていることを知る。

なるほど、自分はジャズべではなくプレべでトーカイやフェンダージャパンのジャパンヴィンテージの良い個体を探せばいいのだな、という事をここで悟った。そして、この4月くらいから毎日デジマートとヤフオクをチェックするという病気に罹患してしまった苦笑。デジマートでみつけた方は、実際に楽器屋に行き試奏した。しかし、今のところ「これは本当にいいのか?」と疑問を持たざるを得ない楽器しか出会っていない。
というなかで、3年前に行ったあの福生の楽器屋に行くしかない、という結論が出た。引っ越しして福生は行きづらくなっていたのだ。

(ところで、プレシジョンベースとは、フレットのないウッドベースと比べて「正確な(precise)」音程がとれるフレット付きの小型のベースとして、フェンダーが世界で初めて発明したエレクトリックベースに名づけられたものです。プレシジョンベースなのに、フレットを抜くことで、音程が正しく取れなくなるという背徳感、語義矛盾が個人的にたまらないと感じています。この感覚わかるでしょうか(笑))