福生の楽器屋 その3. 再訪

中央線の中央特快で新宿から立川までを突っ切るのは久しぶりだ。
そして立川で青梅線に乗り換える。
青梅線の車両はドアがボタン式になっていて停車中に乗客が自由に開閉できるようになっている。これも久しぶり。

電車に乗ろうとすると、自分の前の先に入った人が、後ろの自分に気づかずドアを閉めてしまい、「(わたしいるんですけど!)」ということがよくあるのも、ボタン式あるある。

福生駅に到着し、友人と合流。
横田基地沿いに出るまで、1キロほど、あちぃー、となりながら歩き楽器屋に到着した。

店内はおばあさん1人で、座りながらアコギの調整をしているようだ。

「何かお探しですか?」

プレベを探してまして」

ジャズベは人気があってあまりありませんけど、プレベはたくさんありますよ。」

 

3年前にここでストラトを買った者だと伝えたが、流石に覚えてはいらっしゃらなかった。


アコギを引き続き調整しながら、

「私は何もしませんから、自分でアンプに繋げて、お好きな楽器を弾いてください」

といわれる。

相当な数の楽器やアンプがつめつめで並んでいるため、奥の方の楽器ほど取りだすのが一苦労。ヘマするとドミノ倒しみたいになってもおかしくない。だから、(とても元気な方だが)、体は小さいので、お客さんに任せたいのも納得。

普通の楽器屋だと店員さんに一本づつ「これお願いします」という必要があるので、なんて自由なこと!

というわけで、そこそこ雰囲気のある赤いプレベが気になりシリアルを見るとJVと刻まれていた。いわゆるジャパンヴィンテージとして人気があり巷でプレミア価格気味のものである。取り出そうとすると他の楽器を倒しそうになった。

「倒しても怒りませんから」

と、そこら辺は寛容らしい(もし起こったら悲惨なことに…)。

このベースと70年代フェンダーUSA製など、気になるものをまず3本試奏した。悪くはないが、取り立ててよくもない、という感じ。

「おすすめとかありますか?」

と聞くと。迷わずに、

「これですね。マツモクの昔のものです」

と、メイプルネックのベースが指さされる。

マツモク、とは不勉強ながら知らなかったが、長野にあったメーカーとのこと。
値段的にもさっき弾いたベースの方が2〜4倍の値段がするので、そんなに期待せずに弾いてみた。



明らかにそれまで弾いたものより鳴りがいい!メイプル特有の明るさとパンチのある音なのに加えて、暖かさとふくよかさもある。
友人が「それ、アクティブ(電池入り)なの?」と聞くのももっともだ。もちろんパッシブだし、特別弦高が低かったりピックアップ位置が高いわけでもない。

とはいえ、まだ3本くらいプレベがあり、最初の方に弾いたのも弾き直して、再度このベースを弾いた。
しかし、明らかにこれが良い。


「いやあ、やっぱこれ良いですね。なんでなんですかね」

「私のいうことを信じないんですか?たまたまこの個体のバランスが良いんでしょうね。音に色気があるわね。新しいフェンダーのは木がダメね(その他色々)」

50年間楽器屋をやってきたということは相当な本数の楽器をみてきたということだ。これほど楽器をみる確かな目を持つ人はなかなかいないだろう。それに、自分にとっても納得の「これしかない」という音だ。
と言うわけで購入し、また色々とお話をした。

フレットレス化について伝えると、このお店で受け付け可能とのこと。区内の楽器屋で検討していたが、こういうのは買った店にお願いすべきだろう。何しろ、この楽器屋にまた来たいと思う自分がいた。

「弾き倒してから考えてまた来なさいね」と言われ、お店を出た。

帰りは立川駅で途中下車し、数年前この駅を日常的に利用していた時によく行っていた、東園という中華料理屋さんに久々に行った。

ここは店員全員が中国人で、四川の本場志向な感じだ。とはいえ特別辛いメニューが多いわけでもない。青椒肉絲とかのスタンダードなメニュー含めて、どれも味付けが繊細で美味しい。でも、麻婆豆腐とかになるとつい抑えられずに本場っぽさがでちゃってる感じで、それもご愛嬌。

友人が肉を食いたい、自分は炭水化物を摂取したい、ということで、四川とは関係なしにスタンダードにレバニラとチャーハンを頼んだ。薄味のチャーハンはそれだけでも美味しかったが、レバニラと一緒に食べたり、お店特製のラー油(中国唐辛子を漬けたやつ。あんまり見かけた事ない)を少しかけて食べるとさらに美味しかった。

このお店にしろ、さっき行ってきた楽器屋にしろ、別段、隠れ家、とか、閉鎖的なコミュニティというわけでもなく、日常的に地元内だったり地元外の色んな人が利用してる場がある。そして、SNSが発展してるとはいえ、みんながみんなそれについて投稿するわけではない。

だから、ネット上だけではわからない事はたくさんある。というか、わからない事や、情報があったとしても分かった気になったことがほとんどだろう。

どんな人にも、たまたま縁があって、面白い場、人、もの、こと、に出会ってしまう事がある。

それを、自分のためだけに日記やメモに書いたり、友人との会話で話すように、ひっそりと、ネット上に記録する。そして、何かを特別狙ったり期待しなくても、その記録が、知らない人に思わぬ形で届いているかもしれない。

というあり方がとても良いな、ということを、最近ふと出会った人をきっかけに気付かされ、これを書いてみた。また何かあれば書くかもしれません。

(楽器屋についてですが、もし友人、知り合いで行きたい方がいれば、一緒に行きましょう)