メモ/ランダム

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240214 ポータブルCDプレイヤー

 

 

世の中がどんどん発狂していくのは、あらゆる機器のワイヤレス化が一端を担っているのではないかとBluetoothイアフォンを調べながらなんとなく考えていた。筒井道隆(康隆)の七瀬シリーズを思い出すと、主人公の七瀬は人の心が読めるテレパスの能力を持っていて、彼女は常に他人の悪意にさいなまれている。ここ数年、インターネットを見るたびに他人の悪意にさいなまれるはめになる(もう少し適切にいうなら、他人の「無意識」「欲望」にさいなまれる。「善意」にだってさいなまれる事もある)という面では、僕たちはインターネット(電波)を通じて否が応にもテレパスの機能の一部を身につけているのではないだろうか。

 

などと我ながら半ば暴論だと思うけど、なんでBluetoothイアフォンを調べてたかというと、iPhoneとイヤホンを繋げるDACケーブル(3000円位)が一年位で断線したからである。その前は1000円位のを使っていたが3ヶ月で断線した。もう少し持ちが良さそうなものがないかを調べても種類が少なく次のランクは1万円位になるし、いっそのことワイヤレスにしてしまおうかと思ったが、調べているうちに、(なんだか広島人の気分で)たいぎい気分になってしまった。最近色々と音源を確認する必要はあるんだけど、まあいっか。

 


ここでようやく、この前の正月に帰省した時に確保したポータブルCDプレイヤーの出番がきた。父親が、まだ持ってるで、と引き出しから出してきて、ニッカド電池(懐かしい響き)とACアダプタをネットで3000円くらいで調達してつなげると、なんとちゃんと動作!父親のものだが、多分高2の時に自室にCDコンボが導入できるまで、数ヶ月間か借りて自室で使っていたのを覚えている。しかし外出で使うと若干かさばるわ、というよりそもそもポーブルCDプレイヤーをポータブルした経験ってないやん…と振り返ると、そういえば高校にそういうものを持っていくのってNGな感じやったなあ、とか色々思い出してしまった。電車の中ではよくパットメセニーグループを雰囲気脳内再生していた。我ながらどんな高校生だ。

 

どのアルバムにしようかと迷う暇もなく、ジョニ・ミッチェルのCourt And Sparkを選んだ。セキモト君の愛聴版らしい。

 

2014年頃だったと記憶してるが、ジョニ・ミッチェルの廉価版CDBOXが出た時、Twitterで自分のタイムラインの音楽ファンの間で話題になって買ったものだ。震災後ではあったけど、まだTwitterは牧歌的だった。ギリギリサブスク前の時代。

 

この話も置いといて、このCD BOXでまともに聞いたと言えるのは、ドンファンのじゃじゃ馬娘、だけで、Spotifyから彼女は撤退してるし、正直ジョニミッチェルでアルバム単位できちんと聞いてるのは2枚くらいしかない。

 

むしろトリビュートアルバムの方で、ノンサッチから出てるやつ(プリンスのcase of youなど最高)と、カニエをおさえてグラミーを取ったハービーハンコックのアルバムはめちゃくちゃ好きなアルバムだ。

 

Court And Spark。これしか聞けない制限もあり、行きと休憩と帰りで1日で3回通してきけた。長年と環境が違うので、聞く感覚が違うように感じるのは当然なので、しばらく続けてみよう。

 

音楽自体について。

1回し目は、ポップミュージック基準では、さりげなくも相当変わった構成やコードの響きなのに、すらりと風のようにすぎていく感覚がとても独特だと感じた。特にジョニの声はさっと風のように流れ続けている。

 

最初はその独特さゆえに正直つかみどころがよく分からない(これは自分が、今鳴ってる音楽を演奏するなら、という前提で聞いてるのもあると思う)と感じたが、何回かまわすと、とても心地よくなってきた。

 

これは何か分かりやすいフックがあったり、ミニマルな反復のグルーヴの気持ちよさがあったり、あるいはその音楽のエモーションを感じる、というような分かりやすいつかみどころを理解したというよりかは、絵画の中の光景が徐々に移り変わっていくかのようなありさまを音楽で感受していく、という感覚といえるだろうか。

 

オケを含めた様々な楽器が入っては出ていくアレンジを含めて、時代的にもフュージョン的要素も多く含まれているものの、それだけではくくられない、とても芳醇な音楽だと感じられる。ポップミュージックとしてこのような作品が名作となっているのは素晴らしいことだと思う。今の時代、というよりそれ以前に、彼女以外には成立しにくい音楽ではないだろうか。自分が鈍いだけでそんなこともないのだろうか?

 

似てはいないものの、これは一体なんなんだろう、という面で、最近のCate Le BonやRozi Plainの独自の魅力についても思いをはせたりする。

 

つかみどころ、という言葉を何回か使ったが、音楽のつかみどころとは一体なんなのだろうかと、あらためて思う。